ブロガーから見た「河童×コッペリア」稽古場日誌 Vol.0
初めまして。 今回からキャンディプロジェクトの稽古場日誌を書くことになり ました両目洞窟人間というものです。
私自身はキャンディプロジェクトには全く参加していない縁もゆか りもない一小市民なのですが、 先日街を死んだ目でふらついていたら目が血走った巨漢男性に突然 首根っこをつかまれ「キャンディプロジェクトの稽古場に来い。 さもなくば弟の命はない」と脅されたので、 仕方なく書いております。
弟の命がかかっているので、 文章を打つ手も震えています。
弟の命がかかっているので、
目が血走った巨漢に渡されたザラ紙には、キャンディという男のLINE IDがタイプされていました。連絡すると、稽古場の場所が示されました。
「十条の稽古場に来い」
十条。
一瞬頭がスパークしました。イエモン以来のスパークです。
ここは東京のはずです。しかし、なぜ十条。 稽古場は京都なのでしょうか。
頭の中では「そうだ、京都に行こう」と囁き声が聞こえます。
そう思って調べてみると、 東京にも十条という場所があることを知りました。
「東京にもあったんだ」
多分、 福山雅治も十条を知って、そう思ってあの歌を作ったのでしょう。
弟の命がかかっている私はグーグルマップに急いで目的地を入力し ました。
秒で、十条までの所要時間が出ました。
秒で、十条までの所要時間が出ました。
1時間30分。
遠い。
映画「釣りバカ日誌」 の1の上映時間が93分なのでそれよりはかろうじて短いくらいで す。
ですが、弟の命がかかっているのです。
私は行くことにしました。
稽古場につくと、重々しく禍々しい扉が私の前にあります。
私が手をかけると、カシュンカシュンカシュンッ! と多重ロックが外れる音にぷっぷしゅ~ と圧縮された空気が抜けていく音が聞こえました。
どうやら、 私の指紋はもうこの稽古場に登録されているようでした。
扉を開けます。
あの巨漢の男が立っています。
「やあ、やっときたね」とにやりと笑って
「主宰のキャンディ江口です」 と私に手をさしのべてきたのでした。
私もおずおずとそれに応じて握手をしました。
なんてことでしょう、この男がキャンディ江口だったのです。
私は拳を怒りで固めました。
「あ、そうそう。弟さんですが、今、いい場所にいますよ」
キャンディ江口は笑顔でしたが、目は笑っていません。
私は拳をゆっくりほどきました。
「何が望みなんだ・・・」
私が問いかけると「あなたには一つのことをしてもらいます」
なんだ。強盗か。放火か。人殺しか。弟のためには命をかけ、命をうばう覚悟をしろってことなのか。
「キャンディプロジェクトの稽古場日誌を書いて貰います」
私は思わず二度見しました。
「これからあなたには稽古場にちょくちょく来て頂いて、その日誌を書いて貰います」
はてはて。私は戸惑ってしまいました。あわわわと戸惑ってしまいました。頭の中では強盗を行うイメージが、たいまつを片手に放火を行うイメージが、100均で買った出刃包丁で殺人を行うイメージが流れていたのに、稽古場日誌を書くだなんて。
「な~んだ~」と思わず安堵してしまいました。
というわけでこれからキャンディ江口氏が主催するキャンディプロジェクトで作る新作公演の稽古場日誌とその新作にまつわる話を書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
(つづく)
文章:両目洞窟人間
雑文系ブロガー。映画、演劇、本、音楽から、独創的な妄想まで。
ブログ:にゃんこのいけにえ
2018年3月1日